体幹治療に向けて

体幹治療のための3つの新しい技術

当センターは2008年末に体幹部治療に向けて装置のバージョンアップを行いました。体幹部治療のために加わった主な新しい技術として以下の3つがあります。

Xsight

脊椎や脊椎周辺の病変に対して治療を行うため椎体骨を目印として位置認識し照射します。

Fiducial Tracking

前立腺等を治療するために病変部周囲に配置した金属マーカーを目印として位置認識し照射します。

Synchrony

肺癌等の呼吸により動きが生じる病変に対し、病変部周囲に配置した金属マーカーと体表面にセットしたLEDマーカーを目印として病変の動きを追いかけながら照射します。

以上の新しい技術を利用して体幹部治療を開始するには、まず、その精度と安全性について検証しなければなりません。この検証作業が終了し精度良く安全に治療を行える事が確認されると治療を開始することが可能となります。
*治療開始に際しては、その他に保険適応等の問題もあります。

肺がん・肝がんに対するサイバーナイフ治療が始まりました。詳しくはこちら。

検証の進捗状況

Xsight 頸椎領域 ・・・ 検証終了:2009年2月より治療開始
胸椎領域 ・・・ 検証終了:2009年9月より治療開始
腰椎領域 ・・・ 検証終了:2009年11月より治療開始
Fiducial Tracking 検証終了:適応症例を検討中
Synchrony 検証終了:2011年2月より肺癌の治療を開始

横浜サイバーナイフセンターでの検証

Xsight

Xsightでは、認識する椎体領域が関節部分の動きにより変形してしまう(例えば、首を反ったり、捻ったり、かしげたりした場合)という問題があります。そのため、通常の技術(頭部領域を治療する技術)同様にファントムとフィルムを用いた照射位置精度の確認に加え、椎体の変形が認識可能か、また変形が生じた場合の照射位置誤差はどの程度になるかの確認をしました。

頸椎領域・・・

<頭頚部ファントムとフィルムを用いた照射位置精度の確認>
フィルムをセットした頭頚部ファントムに対し、通常の治療と全く同じ行程でCT撮影・治療計画・位置決め・照射を行い、照射後のフィルムから専用ソフトにて照射位置誤差を求めます。治療開始前に行った10回のテスト結果は以下に示すとおりでトータルの照射位置誤差は中央値:0.3mm、最大値:0.5mmでした。

  • 頭頚部ファントム

  • 当院で行った照射位置精度テストの結果

<変形が生じた場合の精度>
頭頚部ファントムに変形を加えることは不可能であるため、画像変形ソフトにて位置認識に使用される画像(ここでは頭頚部ファントムの画像)に変形を加え、その場合での装置の認識を確認しました。
装置は椎体のズレに対して、左右、前後、頭足方向の平行移動量と各軸の回転量を数値の表示に加え、グリッドと言われるもので形状も表示してくれます。椎体に変形が生じた場合、装置が表示する回転量とグリッドの形状を確認することでどの程度の捻れ等があるか予測出来ることが確認できました。
また、表示される各回転量が0.5度以内になるよう体位を変えて位置合わせすれば、捻れ等がある場合においても照射位置誤差が1mm以内に収まることも幾つかのパターンでのテストと計算で確認出来ました。

  • 画像変形ソフト

以上の結果より、照射位置精度に問題ないことと、精度良く治療を行うためのセットアップの方法等も確認できました。また、安全性に関しましても確認できましたので、2009年2月より頚部領域の治療を開始しました。
胸椎、腰椎領域では頸椎領域と色々な面(椎体の形状、大きさ、画像の見え易さ等)で条件が異なってくるため、各々の領域で同様な確認をする必要があると考えています。

胸椎領域 ・・・

<体幹部ファントムとフィルムを用いた照射位置精度の確認>
フィルムをセットした体幹部(胸部)ファントムに対し、通常の治療と全く同じ行程でCT撮影・治療計画・位置決め・照射を行い、照射後のフィルムから専用ソフトにて照射位置誤差を求めます。上部胸椎領域(3回)と下部胸椎領域(4回)で行った7回のテスト結果は以下に示すとおりでトータルの照射位置誤差は中央値:0.5mm、最大値:0.7mmでした。

  • 体幹部ファントム

  • 当院で行った照射位置精度テストの結果

<変形が生じた場合の精度>
頭頚部領域と同じテストを行い同様な結果が得られました。
以上の結果より、照射位置精度に関しては問題ないことが確認できました。頸椎領域と比較すると若干誤差が大きくなっているため、安全を考慮し頸椎領域よりも治療範囲の制限を厳しくすることとし、治療開始を決定しました。

腰椎領域 ・・・

<体幹部ファントムとフィルムを用いた照射位置精度の確認>
体幹部(腰部)ファントムを用いて胸椎領域と同様のテストを行いました。5回のテスト結果は以下に示すとおりでトータルの照射位置誤差は中央値:0.4mm、最大値:0.5mmでした。

  • 当院で行った照射位置精度テストの結果

<変形が生じた場合の精度>
頭頚部領域、胸椎領域と同じテストを行い同様な結果が得られました。
以上の結果より、胸椎領域同等の精度であり照射位置精度に関しては問題ないと判断しました。治療範囲の制限等を胸椎領域同様にすることとし治療開始を決定しました。

Fiducial Tracking

Fiducial TrackingはSynchronyでも用いられる位置認識の方法である。病変部周囲に配置した複数の金属マーカーを元に位置認識を行います。体位によってもマーカー間の位置関係や距離が変化する事があります。
そのため、通常の技術(頭部領域を治療する技術)同様にファントムとフィルムを用いた照射位置精度の確認に加え、マーカー間の位置関係や距離の変化も精度良く認識可能であるかを確認しました。

<ファントムとフィルムを用いた照射位置精度の確認>
フィルムをセットしたファントム(位置認識用に金属マーカーを埋め込んであります) に対し、通常の治療と全く同じ行程でCT撮影・治療計画・位置決め・照射を行い、照射後のフィルムから専用ソフトにて照射位置誤差を求めます。治療開始前に行った5回のテスト結果は以下に示すとおりでトータルの照射位置誤差は中央値:0.3mm、最大値:0.4mmでした。

  • 当院で行った照射位置精度テストの結果

<マーカー間の位置関係や距離が変化した場合>
Xsight同様に画像変形ソフトにて位置認識に使用されるファントムの画像に変形を加え、マーカー間の位置関係と距離を変化させた場合の装置の認識を確認しました。幾つかのパターンでテストしましたが、マーカー間の位置関係と距離を精度良く認識していました。

以上の結果より、Fiducial Trackingにおける照射位置精度に関しては問題ないと判断しました。

Synchrony

Synchronyでは、動く病変を追いかけながら照射するため、従来のようなフィルムを用いた検証方法では、どの程度の精度で病変を追いかけて照射しているかを評価することは不可能でした。しかし、大阪大学の塩見医師が構築したCCDカメラを利用した検証方法を用いることでその評価が可能となり、今回塩見医師の協力の下に精度を評価しました。
また、以前に線量の分布形状(線量分布)や線量に関しましては誤差が生じていたことを述べましたが、新しくモンテカルロ法という計算方法で計算が出来るようになりましたので、モンテカルロ法での線量計算精度の確認をしました。

<CCDカメラを利用した照射位置精度の確認>
直径約20mmの球内に金マーカーを刺入し模擬腫瘍として動体ファントムで動かしました。この時、体表面の動きとして独立したモーターでLEDを動体ファントムと同期させ動かしました。球を模擬腫瘍として計画を作成し、リニアック先端に取り付けたCCDにより追いかけて照射している時の動画を取得しました。理想的には模擬腫瘍の球とリニアックの動きが一致して、動画上で球は静止しているように見えます。その動画をもとに塩見医師作成のソフトで照射位置誤差の評価を行いました。下の動画では、比較的不規則な呼吸を行う患者さんでの腫瘍の動きと体表の動きを動体ファントムで再現し模擬腫瘍の球を動かしながらテストを行いました。Tracking(-)は、模擬腫瘍を追いかけていない状態での動画で、Tracking(+)は模擬腫瘍を追いかけている時の動画です。最後にグラフが出ていますがTracking(-)では10mm程度の誤差を持ちますが、Tracking(+)では99%以上の確率で誤差は3mm以下でした。

  • 動体ファントムにセットした模擬腫瘍の球とLED


CCDカメラを利用した照射位置精度のテスト

<線量と線量分布の精度確認>
線量の精度を評価するために不均質ファントム(肺野部分としてコルク使用)内の模擬腫瘍に電離箱(線量計)を挿入し模擬腫瘍部分の線量を測定し、計画通りの線量があたっているかを確認しました。測定した線量と比較し、従来の計算方法で計算したものでは5 %程度高い線量となりましたが、モンテカルロ法で計算したものは0.5%以内で一致しました。

また、不均質ファントムにフィルムをセットし模擬腫瘍を含む模擬腫瘍周辺部分の線量分布が計画通りになっているか確認しました。下の図で、破線は計算した線量分布で実線はフィルムで測定した線量分布です。従来の方法で計算したものはフィルムで測定した線量分布とずれていますが、モンテカルロで計算したものではフィルムで測定したものとよく一致していることが確認できました。

  • 不均質ファントム、肺野部分としてコルクを使用し、
    その中に線量計を挿入している

  • 従来の方法で計算した線量分布と
    フィルムで測定した線量分布の比較

  • モンテカルロ法で計算した線量分布と
    フィルムで測定した線量分布の比較

照射位置精度に関しては、患者さんの不規則な呼吸の動きに対し99%以上の確率で3mm以内の誤差に収まっていたという結果であり良好と考えます。線量と線量分布に関しては、従来の計算方法では肺野領域での計算精度は低く、線量・線量分布ともに誤差が大きくなる場合があることが広く知られており、今回お示しした当院の結果でも誤差が生じていました。しかし、新しく導入されたモンテカルロ法では線量、線量分布ともに計算したものと測定したものが良く一致していました。

当院で作成したMR画像から腫瘍と体表面の動きの情報を取得するソフトと今回行ったテストを組み合わせることで、事前に各患者さんの治療時に生じる誤差を予測することが可能となります。

以上のことより、モンテカルロ法にて計算を行い、患者さんごとに治療時に生じる誤差を予め評価しその結果を治療計画に取り込むことで、肺癌等に対してもSynchronyで精度の高い治療を実施することが可能と判断しました。

肺がん治療のプロトコル(どのくらいの量の放射線を何日であてるか等)が完成し、2011年の2月中旬から肺がんの治療を開始しました。また、Synchronyを使用した1例目の治療が6月上旬に無事終了しました。治療に際し、我々が構築した評価方法を用いて事前に患者さんの腫瘍と体表面の動きを再現し行った評価で、予測された誤差は99%以上の確率で2mm以内でした。治療は4分割(4回に分けての治療)で行われましたが、治療後に装置に残されたデータを解析した結果、4回行った治療全てでデータ上では2mm以内の誤差で100%照射出来ていたことが確認されました。
これによって今回行った1例目の患者さんに対し計画通り安全に治療が行えたこと、治療前に行った我々の評価法が正しかったことが確認できました。

サイバーナイフ

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